
さくらんぼ夫婦のアウトライン
年齢 | 78歳 |
家族構成 | 奥さんと二人暮らし |
症状・病気 | 肝臓癌 |
保険 | 医療保険 |
訪問看護 | 週1回〜2回 |
お父さーん!中村さん来てくれたよ~♪

底抜けに明るいお母さんの声と、夕御飯の準備の良い香りに迎えられて通されたお部屋には、スーツを着てちょっとふっくらしてこちらに微笑んでくれるお父さんの写真がありました。
私たちの訪問看護。一般の方には何をしてくれるのか?イメージがわきにくいものです。
訪問看護では、ご本人の医療ケアももちろんですが、お家で介護をメインでされる方々への、身体と心に優しい介護方法の工夫やアドバイス、困りごとの解消に向け、愚痴聞き(笑)や気分転換トーク、さらにその先に解決策を一緒に探しにいくことまで、家族まるごとサポートしていきます。
介護保険のサービスでは、ベッドや車椅子、手すりなどの福祉用具の貸し出しがあるので、そのサービスは使うけど、人の関わるようなサポートは使っておられない方々もおられます。
また、ケアマネジャーにとっては、ご家族の介護だけだと身体も心も負担が大きくなるので、人の関わるようなサポートを導入したいと思う反面、ご本人やご家族が自分たちだけで大丈夫!今の状況で大丈夫!と言われてしまうと、無理矢理にサービスを導入するわけにもいかず、ぐっとこらえて頑張りを見守る。そんなケースもあります。
進化版家族のリズムをつくりあげていた愛のお母さん
このご夫婦。
お母さんが、とにかくお父さんのことが大好き。言葉や態度での表現ではなく、行動そのものが“愛”のお母さん。二人の間に言葉はなくとも繋がっているんです。
共に歩んだ夫婦の歴史そのものが愛!

ご主人の仕事を同じ会社に勤めてサポートし、プライベートでも、ゴルフから手品、カラオケやお友達とのお付き合いまで。口数の少ないお父さんですが、常に妻同伴であることがお父さんの愛の表現。
入院すれば、お母さんは毎日チャリンコを走らせて病院に通い、在宅での介護はお母さんが完結できるようにお父さんも協力して2人の生活パターンをつくることで、二人三脚で歩んでこられました。
しかも、大家族の中で、夕御飯の仕度はお母さんが担い手。ご主人のお仕事も引き継いだお母さんが、午前中は会社に顔を出してお父さん留守の会社を守ります。
療養生活では、お母さんの生活リズムとお父さんの生活リズム、家族の生活をうまく組み合わせた、進化版家族のリズムを上手に作り上げてこられました。
増える介護量と生活リズムのバランスが・・・
そんな中で、お父さんの身体は運動量が減り、体力も消耗しやすく・・・。1人でできていたことが減っていき、ベッド上での生活に。身体の変化に合わせた自然な流れとして、介護の量や方法は刻々と変化が求められます。
トイレの問題やオムツ、清潔面のお手伝いが増えていく中で、お母さんの生活を保ちながら介護する生活リズムと、お父さんに必要な介護量にズレが出てきます。
そのタイミングを的確に判断して、大丈夫と言うお母さんを説得し、2人の生活リズムを重ねていくためにも人の関わるようなサポートを導入してみよう!会うだけ!ちょっと使ってみるだけ!話聞いてみよう!と、ケアマネジャーさんがスタイル訪問看護ステーションをご紹介くださり、始まった訪問看護でした。
介護のコツをいっしょに楽しみながら
はじめは、家の中でできる工夫が実はたくさんあることを、オムツ交換のコツや立ち上がり、介護のコツを一緒に試しながらお伝えしていきます。
車椅子での簡単な運動やゲームをお母さんも巻き込んで、一緒に体力づくりということで、看護師と3人で大盛り上がりでやってみたり(笑)、清潔を保つためベッドの上で身体を拭いたり、着替えをするコツをお伝えしながら一緒にやってみたり。
オムツを使って寝たままできるシャンプー。時には爪切りやマッサージをしながら、お父さんの若かりしころの男前ネタから、趣味や特技を通したお母さんのお父さん自慢、お父さんとお母さんの馴れ初めを聞いて看護師がキュンキュンをいただいたり(笑)。
無理やり寡黙なお父さんからお母さんへの愛のメッセージを、言葉の訓練と称して伝えていただいたり(笑)。
とても、豊かな時間を私たちのほうがもらうことができました。
弱っていくお父さんをみたくない。

でも、自然の流れの中に生きる私たちの身体。衰えていく身体の変化はコントロールできる範囲を超えていきます・・・。食事量が減り、飲み込みもすこしずつ上手くいかなくなっていきます。
行動が愛のお母さんとしたら、食事をとってもらうことが愛。食事の工夫はいっぱいしてくれます。しかし、身体的に受け付けられなくなって食べられなくなったら在宅介護は難しいと、前々からご夫婦で腹を決めておられました。
弱っていくお父さんをみたくない。
苦しそうにするお父さんを見ていられない。
今までやってきたケアの延長の介護はできるけど、吸引などの医療行為はできない。そう決めたお母さんのキモチは、最期まで変わりませんでした。
そして、入院して数ヶ月。皆勤賞に近いお見舞いに通い続け、お母さんだけにはちゃんと言葉ではない表情や安心感を身体いっぱいに表現して、お母さんだけに愛を届け続けて、命を生ききったお父さんは、この身体を卒業していきました。
最期の「場所」ではなく、最期の「想い」を
私は在宅という場で、訪問看護という仕事をしています。家で最期まで過ごすサポートもしますが、ご本人とご家族の意向が病院での最期であったり、施設の入所であったとしても、それを全力で応援します。
この世界は選択肢がたくさんあり、それを選んだからには、選んだ人が選んだことを後悔しないように、誰がなんと言おうともご本人やご家族が納得して歩みを進めていけるようにサポートをしたいと思うからです。
最期の「場所」が大切なのではなく、その瞬間を迎えるときの「想い」を大切にしたい。
ご本人が「これで、この身体を卒業!」と安心して思うことができ、その瞬間を穏やかに迎えられること。
家族や支援者が、「私はやりきった!」と感じ、最期まで大切な人を大切だと想い続けて愛を表現できること。そして、遺されたご家族が、次は自分の人生を、未来への歩みをすすめていけることが大切だと感じます。
私、本当にやりきったんよ。

私、本当にやりきったんよ。だから寂しいとか本当に思わんのよ
お母さんは本当にやりきった!と穏やかな笑顔で語ってくださいました。
行動が愛のお母さんは、最期まで自分のできる最高の行動という形で愛を届け続け、お父さんもそれを受け取り続けることができたのです。
そこには、やりきった!というお母さんの想いと、納得感。どんな時も、お母さん自身の人生を全力で歩んでいる!という誇りがあります。
そして、お母さんの想いを大事にして受け取り続けたお父さんの愛がそこにはありました。お互いの大事にするものを気持ちよく届けて受け取る。そんな素敵な循環する愛がお2人の中にはありました。
それをみて、本当に素敵なご夫婦だと改めて尊敬します。
その家族だけの幸せのかたちを一緒につくっていきたい

さくらんぼ夫婦
夫婦の在り方
妻として
女性として
サポーターとして。
私は個人的にお2人からたくさんのことを教わりました。
ご主人のお仕事をサポートして、人生をサポートして共に歩む姿は、私もこうありたい!そう思える女性としての在り方をお母さんからいただき、そして、言葉で語らずとも奥さんのことが大好きなお父さんの、歩んだ歴史が物語る夫婦の愛。
夫婦だからこそ届けあえるキャッチボールの形は、いろいろあっていい。2人の中だけに通じあうことがある。そう想えました。
そして、そんな家族の在り方を全力で応援できたことが嬉しい。
それぞれの想いを大切に、家族の中にすでに備わった力を信じて!その家族だけの幸せのかたちを一緒につくっていきたい、と強く強く思いました。
ありがとう。夫婦の記念撮影

スタイル訪問看護ステーションには、お2人の写真がいつも私たちに笑顔を向けてくれています♪
お父さんのお誕生日に花束を、そして、お父さんからお母さんにありがとうの気持ちを♪ということで、一輪のガーベラを用意して。お父さんからありがとうと一緒に渡してもらって夫婦の記念撮影♪

この写真お気に入りだから、ちゃんと大事に飾ってるんよ~
その写真は今でも大切な写真たちと一緒に、お母さんの部屋に飾ってくださっています。
お参りに伺った際に、お母さんがお父さんの戒名についてお話くださいました。天に召されてからあとも、皆の幸せを願ってずっと見守り、照らし続ける存在としてありつづけるという想いが込められた戒名なんだそうです。
生きているときのお父さん、そのままを表すような素晴らしい戒名をもらえた。いつも、そばに居てくれる気がして、寂しくないのよ。と、お母さん。
真実の心を捧げあう
さくらんぼの花言葉は『あなたに真実の心を捧げる』。
一つぶ一つぶそれぞれに存在感がありながらも、枝でくっついて、いつもニコイチ♪。しかもいつまでも真っ赤で、ココロも真ん丸で、キュートで・・・。いつまでもお互いの愛を届けあい、受け取りあえている。
まさに
『真実の心を捧げあう』
そんな言葉がぴったりのさくらんぼ夫婦。
夫婦として、あんな年の重ねかたができたら素敵だなぁ。素晴らしいご夫婦に出逢いました。

お父さんがちゃんと見守ってくれてるから、スタイルさんも中村さんも大丈夫!ずっと幸せであるように照らし続けてくれてるよ。
何よりも嬉しいさくらんぼ夫婦からの言葉のギフト。
お父さん!お母さん!
二人からの永遠の贈り物、たくさんの学びと気づき、素敵な言葉たち。ちゃんと受け取りました!まだまだやります!
きっとお父さんは、お母さんと再び出逢いさくらんぼ夫婦となるその日まで、お母さんの幸せを全力照らし続けてくれるんでしょうね。
出逢えた奇跡に心からの感謝を込めて!ありがとうございました!